在宅医療介護の現場で働くひとたちの想いを伝えるインタビューメディア「メディケアワークス」。今回は、瑞穂区にある「ライフアップ訪問看護ステーション陽明」石原静恵さんにインタビューしました。
「看護師は天職です」と語る石原さん。物心をついた時から自分は看護師になると決めていたそうです。
石原さんは、訪問看護に対して強い情熱を持ち、「訪問看護は看護師としての最終ゴール」と位置づけています。訪問看護は、一人ひとりの患者さんに時間をかけ、深く関わることができるのが特長の一つ。一人ひとりの患者さんと向き合える時間が「すごく贅沢」と感じているそうです。そんな石原さんの想いに、共感する看護師さんもきっと多いのではないでしょうか。
日々の看護に込められている石原さんの深い想いについて、ぜひ記事や動画を通してご覧ください。
特色は、リハビリスタッフの多さ。スピード感ある多職種との連携が強み。
ー自己紹介をお願いします。
ライフアップ訪問看護ステーション陽明の管理者・看護師の石原静恵と申します。
—事業所の紹介をお願いします。
うちの事業所は居宅があって、訪問看護としてステーションが山王とこちらの瑞穂区陽明の2カ所にあります。デイサービス、施設、訪問リハビリがあり、訪問診療部もあって、それぞれの特色を活かし、連携しながら進めています。エリアは瑞穂区、昭和区を中心に、千種区、南区、緑区、名東区、中区、天白区も回っています。
特色は、PT8名、OT4名、ST1名と、リハビリスタッフ(セラピスト)が多いことです。名古屋市でもリハビリスタッフがこれだけそろっているところは、少ないと思います。看護師は非常勤も含めて10名、それに事務が働いています。リハビリスタッフがそろっているので、自分のかかわっている利用者さんに困ったことや悩みがあったら、すぐにその専門職に相談をして解決に向かえるよう、連携が取りやすい状況にあるというのが、すごく強みだなと感じています。
— 実際に多職種での連携を感じたエピソードはありますか?
病院からご依頼をいただいたケースで、「お家でとにかく最期を過ごしたい」というご本人様の想いがあり、ご家族も「よし、じゃあ家に帰ろう」と急に決まって、病院から電話がかかってきたことがありました。病院からお電話をいただいた際は、「移動中に息を引き取られるかも」とのことでしたが、「ぜひ、やりましょう」と引き受け、結果としてそこから1週間、頑張ったんですね。
まったくかかわりを持っていないところに、まず私たちがお邪魔する、在宅医がお邪魔する、福祉用具がお邪魔する、薬剤師がお邪魔する、そして麻薬の管理をしていくという状況でしたが、患者様は1週間、ご自宅で過ごすことができ、その間にもたくさんの方が顔を見に来て、ご本人と話すこともできました。その方をご自宅に迎えるため、ケアマネージャーさんを中心にスピード感を持って多職種が集結し、また、数時間で必要な機械も取り寄せたそのケースは、在宅医療のすごさを改めて実感するものでした。
多職種が連携し、患者様とご家族が、最期の大事な時間をともに過ごせるよう力を尽くす。
— 入職したきっかけを教えてください。
今も事務で働いているスタッフの紹介です。そのスタッフは10年ぐらい前からの友達で、訪問看護をやりたいということを、よく話していました。ただ、子育てで休んでいたこともあり、一人で回らなければならない訪問看護に対し、正直不安もありました。そこで大学病院で「3年働く」と決め、今の医療を勉強してから、入職させていただいたという形です。
— 訪問看護に興味を持ったきっかけを教えてください。
学生時代に卒業論文で、「デイサービス」を扱いました。もうだいぶ前ですが、当時、デイサービスがようやく主流になり始めたときで、興味を持ったんです。デイサービスを利用しているご家族様が、そのデイサービスを利用することでどういうメリットがあり、どういう風に変わったかを、アンケートをとって研究し、それを発表したのですが、考えてみればその頃から、「在宅」に着眼していたのかなと思います。
— 今までで一番印象に残っている利用者さんについて教えてください。
皆さんそうかもしれませんが、いちばん最初に看取りをさせていただいた患者様が、今の訪問看護するにあたっての原点になっているかなと思っています。その方にかかわるにあたり、何を最終的にしたいかを聞き取ると、「デイサービスに最期まで通いたい」とか「家族と一緒にダイニングテーブルで食事をしたい」といった希望がわかりました。終末期に入っていたので、リハビリがちょっと手を引いている状況でしたが、そのご希望をかなえるためには、やはりリハビリの力をかけないととなり、すぐにPTに相談をして、「最期までダイニングテーブルでご飯を食べるためにはどの筋力が必要か」「トイレに行くための動線はどういう風にするか」などを話し合い、終末期を迎えるための環境整備に努めました。
亡くなる前日、意識朦朧の中でしたが、ベッドを囲んだご家族と思い出話をされていました。そして会話を何とかしながら、鉛筆を持って奥様の名前を書かれたんです。ご家族から、亡くなられたあとにそれを見せていただいたのが、すごく印象に残っています。こうやって患者様とご家族が、大事な時間を最期にともに持てたというのは、在宅だからできたことだなと思います。
この経験を通し、セラピストと連携して対応することで、最期までその方を看る環境を、うちのステーションは作る力があるなと感じて、今もそれは大事にしていきたいと思っています。また、終末期だからこそ、「最期に何をこの方がしたいのか」をすごく考えるようにもなりました。「食事をしたい」と言われたら、そこはもうSTが出ていく場面かなと思うので、看護師ももちろん大事ですが、セラピストの力もすごく大事だなって思っています。
看護に大切なのは、患者様の想いを知ること。ご家族や主治医との調整も大切な役割。
— 看護を提供するうえで、大切にしていることは何ですか?
住み慣れた家でどのように過ごしていきたいのか、その方の想いを知ることを、大事にしています。それは回復期であっても、終末期であっても同じです。そのためにご本人だけでなく、ご家族の想いもきちんと聞き取るようにしています。ただ、必ずしもご本人とご家族の想いが一致するわけではなく、また、主治医の考えもあるので、そのへんの調整もしながら、患者様の思いに寄り添いたいなと思っています。
— 想いを聞き取るために、何か工夫していることはありますか?
場所を変えて聞き取りをしたり、カードゲーム(もしバナゲーム)を使って想いを聞いたりすることがあります。
— 利用者さんとご家族と一緒に、「もしバナゲーム」をするのですか?
ご本人の本音を聞けない場合もあるので、ご家族様にはちょっと違う場所にいていただきます。逆にご家族様にもやってもらって、その想いを聞くこともありますね。
看護師は天職。患者様と深くかかわれる訪問看護は、その最終ゴール。
— 自分にとって訪問看護とは?
看護師そのものは、自分にとって天職だと思っています。そしてその中で、訪問看護は最終ゴールだと思っています。
— 看護師が天職だと感じた理由やエピソードはありますか?
昔から看護師以外の職業を考えられず、小学生のときにはすでに、看護師になるためには、自分はどういう道に進んだらいいのかを考えていました。中学生のときですが、友達の入院をきっかけに看護師さんに話を聞いて、看護師になるためにどういう高校を選んだらいいのかなどの相談をしたこともありました。とにかく目指すは看護師だったので、看護学校へ行ってからが、自分の人生の始まりといった感じがしています。
— 実際に看護師になってみて、想像と現実でギャップはありましたか?
はい。訪問看護の現場に来るまで、いろいろな部署に行って、外来にも行ったのですが、自分のやりたいことができないことも多く、仕事に対して納得しきれていませんでした。ただ、看護師という職業自体は自分に合っていると思っていたので、その場で何ができるかは常に考えていました。そして、最終ゴールが今なんですね。訪問看護が、自分の納得できる場所なんです。
— 訪問看護のどのようなところに納得感を得たのですか?
病棟では、ナースコール鳴りました→行きました→用事済ませました→また違う所に行く、のような流れが多く、患者様と深くかかわることが難しかったんです。一方、訪問看護は、その方にその時間を費やすわけですよね。ですので、お互いすごく贅沢な時間だと感じています。よくスタッフにも、「その30分、その1時間は贅沢な時間で、自分たちにとっても充実している時間なんだよ」ということは、伝えています。自分がそうやって「この方に何ができるのか」を考えるのが、すごく楽しいんだと思います。