在宅医療介護の現場で働くひとたちの想いを伝えるインタビューメディア「メディケアワークス」。今回は、昭和区にある「セントケア訪問看護ステーション御器所」所長の奥濱亜由美さんにインタビューしました。
奥濱さんは所長ですが、ステーション内で最年少。スタッフは自分より経験豊富な方ばかり。マネジメントは非常に難しそうだと思いましたが、持ち前の柔らかい雰囲気と、どんな意見でもまずは受け入れるという柔軟性で、チームをまとめていました。『「その人らしさ」を大切にしたい』という奥濱さんの言葉は、利用者さん、スタッフの皆さんなど、自分のまわりの方々をリスペクトしているから出てくるのだと感じました。
奥濱さんがどんな思いを持って日々の看護に取り組んでいるのか。ぜひその思いをご覧ください。
どんな意見でもまずは受け入れて、みんなの意見を引き出す。
ー自己紹介をお願いします。
セントケア訪問看護ステーション御器所 所長の奥濱亜由美と申します。
—事業所の紹介をお願いします。
本社は、名古屋駅にあるセントケア中部株式会社です。当ステーションは、セントケア中部の中で3箇所目にオープンした事業所になります。
訪問エリアは広くとってまして、昭和区、千種区、瑞穂区、天白区、中区、熱田区、南区まで対応させていただいています。
スタッフは6名いて、半数以上が経験者です。なので、初めて訪問看護にチャレンジしたいという看護師さんでも十分サポートできる環境だと思います。
― 事業所の強みを教えて下さい。
スタッフ数が6名と充足していますし、半数以上が訪問看護経験者なので、ご依頼・ご要望にも即時対応できます。さらに、終末期ケア専門士という資格を持ったスタッフがいるので、終末期看護も自信を持って提供できます。
― スタッフとの関わり方で大事にしていることはありますか?
私たちは、コミュニケーションをすごく大事にしています。所長である私が「こうしよう」って言ってしまうと、「本当はこうしたいのに」などの意見が言えずに、不満につながってしまうこともあると思っています。
当ステーションは、私よりも経験豊富なスタッフばかりです。なので、何かを決めるときは必ず話し合いをして、みんなが納得できる形で決めるようにしています。その方がいい方法を引き出せますし、スタッフみんなが不満を感じないと考えています。
― スタッフ一人ひとりの意見を聞くためにどんなことを意識していますか?
私、基本的には否定をしないんです。どんな意見でも一つの意見として受け入れるようにしていますね。言いやすい空気を心がけています。
スタッフ同士で本音をぶつけ合い、チームワークを高めた。
― 入職したきっかけを教えてください。
入職したきっかけは、会社の上司から「新規で御器所にオープンするから所長にどうか」と声をかけていただいたことです。
― これまでのキャリアを教えて下さい。
3年くらい訪問看護を経験しました。その後、デイサービスで働いたのちに、また訪問看護に戻ってきました。
— 今までで一番印象に残っている利用者さんのことを教えてください。
認知機能が低下している方で、食事が取れなくなり、胃ろうを造設された方でした。入院中にオシッコが出なくなり、バルーンを入れました。ご主人が介護をしていたのですが、「経口から摂取できること」「バルーンを抜去すること」をすごく希望されていて。
私たちも、ご主人へ高カロリーの栄養剤などの情報提供したり、往診医と情報共有しながら、介入をしていきました。その結果、経口摂取もできるようになりましたし、バルーンも抜去できました。ご本人とご主人が望む姿になることができたんです。
私は所長なのですが、ステーション内で最年少で。スタッフは、みんな私より年上で、知識や経験が豊富です。その利用者さまへの関わり方を通じて、私自身、すごく勉強になりました。自分も訪問看護を改めて学んだ事例だったので、すごく印象に残ってます。
— 基本的に奥濱さんお一人で対応されたのですか?
みんなで順番にいろんな看護師が入るという形で、毎日訪問していました。毎朝、朝礼とカンファレンスをしているのですが、そのときに、その利用者さまについてどうしたらいいのか、どのように説明したらご納得いただけるか、どういう情報をご主人が欲しがっているのか、などを密に話し合いました。みんなで情報共有しながら関わっていましたね。
— 最年少で所長をされている中で、どのようにチームをまとめていきましたか?
私も所長という役職が初めてだったので、最初はどうしたらいいのかが分からなかったというのが正直なところで。その中でも、スタッフと本音でぶつかり合って、お互いどう思っているのか、ということを話し合うようにしました。
スタッフみんな出身が違いますし、それまで仕事をしてきた環境が異なっているので、価値観や考え方はだいぶ違います。そこをすり合わせるために、毎朝話し合いをしました。本音でぶつかり合うことで、チームワークができたかなと思います。
「その人らしさ」を大切に。在宅生活を一番サポートできる存在でありたい。
— 看護を提供する上で大切にしていることはなんですか?
大切にしていることは「その人らしさ」です。
私は、病棟を5年経験してから、訪看へいきました。病院にいると、患者さんはみんな同じ病衣を着てて。病院は治療する場なので、治療することが優先されます。「その人がやりたいこと」というのは全然見えてこないんです。
訪問看護をやり初めてからは「その人がどうしたいか」を一番大事に考えて看護を提供するようにしていますね。
— 「その人がどうしたいか」はどうやって読み取っていますか?
私はまず家に入ったときに、壁に貼ってあるものや、物の量などを見るようにしています。そこから「こういうものが好きなんだな」というのを、自分の中でなんとなく想像してから利用者さまと関わるようにしています。
利用者さま自身のことを話題にしていると、何が好きなのかや、趣味など、「その人らしさ」につながる話をしてくれるようになるんですよね。その会話のやり取りから、「利用者さまがどんな人なのか」というを読み取るようにしています。
また、ご本人とご家族の両方から話を聞くようにしています。ご家族がいないときにご本人からお話を聞いたり、ご家族にもご本人がいないところでお話を聞いたりしています。利用者さまとご家族が、お互いに本音ではどのように思っているのかを、双方から聞き取って確認するようにしています。
その上で、私はご本人がしたいように看護したいなと思っています。本人に確認してからですが、ご家族に対して、本人がこういう風に思ってるみたいですよ、ということを伝えさせてもらうこともあります。その上で、意思決定支援をしていく感じです。
— 奥濱さんにとって訪問看護とは?
訪問看護とは、「在宅で生活する上で一番サポートさせていただける仕事」だと思ってます。訪問看護は何でもできるんですよね。全身状態も看れるし、服薬のサポートもできますし、リハビリもできますし、生活も看れますし、点滴などの医療行為もできます。在宅で過ごされる方のサポートを一番できる仕事だと思います。