支える者としてではなく、支えられる者として。感謝の気持ちをもって誠心誠意、看護を提供する|訪問看護ステーションゆいまーる 岩本早織・岩本千枝

在宅医療介護の現場で働くひとたちの想いを伝えるインタビューメディア「メディケアワークス」。今回は、津島市にある「株式会社はじめの一歩」取締役の岩本早織さん、「訪問看護ステーションゆいまーる」管理者の岩本千枝さんにインタビューしました。

「支える者としてではなく、支えられる者として」

岩本さんのこの言葉は、看護師としての役割についての一風変わった視点を示しています。通常、看護師は利用者を支える立場にありますが、岩本さんは「支えられているのは実は私たち」と述べています。利用者さんやご家族が在宅で頑張っている姿は、岩本さんたち自身にも力を与え、心に深い影響を与えています。

岩本さんのスタンスは、ゆいまーるさんがどれだけ誠実に訪問看護を提供しているかを示しているなと感じました。

岩本さんたちがどのように日々の看護業務を通じてこの理念を実践しているのか、ぜひそのストーリーをご覧ください。

インタビューの様子は動画で公開中!ぜひご覧ください。

スタッフの高い専門性とチームワークが強み

(右より)株式会社はじめの一歩 取締役 岩本早織さん
訪問看護ステーションゆいまーる 管理者 岩本千枝さん

 ー自己紹介をお願いします。

千枝さん:訪問看護ステーションゆいまーる管理者の岩本千枝といいます。よろしくお願いします。

早織さん:株式会社はじめの一歩取締役の岩本早織です。

※お二人は名字は同じですが、血縁関係はありません。たまたま同じ姓だったとのことです。

 —事業所の紹介をお願いします。

千枝さん:当社は12年前に設立され、訪問介護事業所や居宅介護支援事業所をスタートしました。その後、デイサービスを開設し、2023年4月に訪問看護ステーションが加わりました。訪問看護の訪問エリアは津島市、あま市、愛西市、弥富市、稲沢市平和町です。

 事業所の強みはなんですか?

千枝さん:私たちのスタッフは現在3人で、それぞれが異なる専門性を持っています。私は、障害施設と認知症病棟で20年近く経験を積んできました。一人は公立の総合病院で30年近く働いたベテラン。もう一人が泌尿器や透析に特化して10年程度やってきた方です。

私たちの強みは、この多様性から生まれるチームワークにあります。例えば、認知症の管理には私の経験が、複雑な病状の管理には総合病院での経験が、高齢者に多い泌尿器系の問題には泌尿器の専門知識が直接役立っています。

1人の利用者さんに対して、私たちはスタッフ全員で意見を出し合い、議論を重ねます。各スタッフの異なる専門性から生まれる多様な視点は、利用者さんに最適なサービスを提供するために不可欠です。私たちは、これらの意見を組み合わせ、全員が同じ方向を向いてサービスが提供できるように心がけています。

早織さん:今までの経験は3人それぞれで全然違うんですけど、性格も全然違うんです。利用者さんについて、話し合う場面でも、ああでもない、こうでもないと、3人がいろんな意見を主張して、熱い話し合いをしている姿をいつも見ています。チームでよりよいサービスを提供しようっていう熱い思いがすごく伝わってくるので誇らしいです。

千枝さん:うちはたまたま岩本姓が複数名いるというのもあるのですが、スタッフ間でもみんなファーストネームで、呼び合っています。それもチームワークの良さにつながっているのかなと思います。

多職種で連携し、利用者さんを支えることでQOLを高める

 ゆいまーるさんは、居宅介護支援や訪問介護も展開していますが、密接な連携が役立った事例はありますか?

千枝さん:訪問看護で介入させていただいた利用者さんでした。当初、ご家族は訪問看護は受け入れていただいたのですが、訪問介護の導入には消極的でした。ご家族自身で介護できるから大丈夫、というのが理由です。

ご家族は、自分でできるのに、人に頼むことに対して罪悪感があるのかなと思うのです。そこで、訪問看護師から「このようなことは訪問介護に頼んで大丈夫ですよ」とご家族へお伝えしました。日常の介護は訪問介護に任せても大丈夫だと考えを切り替えていただき、結果、訪問介護も導入いただくことになりました。

訪問介護が導入されることによって、ご家族の介護負担は減りました。ご家族は家に縛られずに済み、買い物や趣味などの自由時間を持てるようになりました。それと同時に、ご利用者さま自身も元気になられたのです。訪問介護と訪問看護が連携し、一人一人のニーズに合わせたサポートを提供することの大切さを感じたケースです。

 素晴らしい連携ですね。

千枝さん:そうですね。今も訪問看護と訪問介護の両方に入らせていただいています。ご家族が一生懸命気を張って生活している中で、訪問看護や訪問介護が入ることによって、心や時間にゆとりができます。看護師やヘルパーにちょっとした愚痴が言えたり、時間にゆとりが持てたり。すごく大事なことだと思います。

早織さん:もちろん、日頃から他の法人のケアマネさんとは、電話やメールを使って連絡はとっています。一方で、同じ法人内だと、ケアマネージャー、訪問介護、訪問看護が実際に顔を合わせる回数が多いので、より密に連絡が取り合えます。1人の利用者さんに対して、トータルにケアを提供できる環境がありますね。

ゆいまーるの理念に共感し入職を決意。トータルケアを提供

 事業所を立ち上げたきっかけを教えてください。

早織さん:株式会社はじめの一歩の社長が、ケアマネとして長年受け持っていた利用者さんが訪問介護を利用されていました。看取りの時期が近づいたとき、その方は自宅で最期を迎えたいと願われました。当時、訪問看護事業はまだ立ち上げていなかったため、他の訪問看護事業所のサポートを求めました。当社が在宅介護に注力していることから、訪問看護も提供できれば、トータルで在宅での支援が可能になると考え、訪問看護事業を始めました。

 入職したきっかけを教えてください。

千枝さん:私は以前、社長と同じ職場で働いていました。病院や施設で働いてきたのですが、患者さんとの距離について、「なんか違うな」と常に思っていたんです。

そんなときに、訪問看護を紹介するテレビ番組をたまたま見て、感銘を受けたんです。准看護師の資格しか持っていなかった私は、一念発起し、看護学校へ行き、50歳を前にして正看護師の資格を取りました。その後、訪問看護の世界に飛び込みました。社長から訪問看護事業の立ち上げに関わるようお誘いを受け、ゆいまーるの理念に共感し、入職を決めました。

 ゆいまーるの理念を教えてください。

早織さん:私たちの理念は『全従業員の幸せを実現し、利用者と地域に愛される会社を目指す』です。これは単に事業を運営することを超え、地域コミュニティの一部として、利用者さんとその家族、そして従業員の幸福を目指すというものです。

その人らしさを叶えるためのサポートができるのが訪問看護の醍醐味

 今までで一番印象に残っている利用者さんのことを教えてください。

千枝さん:私たちが関わるすべての利用者さんと、深い関係性なので、印象に残っている方はたくさんいます。中でも、私が特に印象に残っているのは、独居でがん末期だったある利用者さんです。

その方は競輪が大好きで、亡くなる数日前まで、ご近所の方の助けを借りて、車いすで競輪場に出かけていました。最期はご自宅で、人生の終わりを迎えました。最期の最後まで、大好きな競輪を楽しまれた姿は、「ああ、これがこの方の人生なのだな」ということを深く教えてくれました。

病院だと、どうしても制限があって、やりたいことも叶えられない場合が多いですが、在宅看護では、利用者さんが求める自分らしい最期を過ごすことができます。ご本人はもちろん、周囲の方々やご家族も、「これで良かった」と心から感じられるようなサポートを提供できるのが、訪問看護の素晴らしい点ですね。

 — 病院看護と在宅看護ではどのようなところに違いを感じますか?

千枝さん:病院看護と在宅看護の最大の違いは、利用者さんの日常生活にどれだけ密接に関われるかです。特に独居の方の場合、ご近所の方々が日々の食事を提供してくださるなど、地域コミュニティの支えが非常に重要です。在宅看護では、これら地域の絆が、利用者さんが自宅で安心して過ごせる重要な要素になっています。私たちは、ただの医療提供者ではなく、地域コミュニティの一員として、利用者さんの人生の一部に深く関わることができるのです。

支えられてるのは私たち。感謝の気持をもって誠心誠意訪問する。 

 — 看護を提供する上で大切にしていることはなんですか?

千枝さん:私たちは、看護を提供するのですが、一方で、「支えられてるのは逆に私たち」というのをすごく感じています。利用者さんのところへ訪問し、頑張っているご本人やご家族の姿をみると、本当にこちらが元気づけられます。そのお礼として、私たちが看護を提供しているという感じですね。

いくら自分が疲れていても、訪問へ行くと、逆に元気になって、帰ってこれます。本当にこちらが支えられている感じが強くて、もう感謝、感謝です。利用者さんにも、最期これでよかったと思っていただけるように、誠心誠意、訪問させていただいています。

 — 訪問看護だとご家族との関わりも大切だと思いますが、気をつけていることはありますか?

千枝さん:ご家族は、利用者さんを何十年も支えていらっしゃいます。私たちが関わるのは、1日24時間のうち、たった1時間ぐらいですが、ご家族の方は24時間支えています。その強さは本当にすごいなと思います。もう素晴らしいです。

ご家族とご本人はともに頑張っているのに、関係性がギクシャクしてしまうことがあります。お互いに頑張っているのに、それは勿体ない。私たち訪問看護が入って、客観的に対応し、潤滑剤になれれば、それはとても嬉しいことですね。

 — ご本人の意志と必要な医療ケアのどちらを優先すべきかのジレンマを感じることはありますか?

千枝:もちろん、そういうのもあります。でも、ご本人が心から望まれていることを優先させていただきたいと思ってます。

早織さん:ご本人のお気持ちを尊重したいと思っています。医療的、介護的に必要な介入はあると思うのですが、本人がそれを望まない場合もあります。ご本人の意志を無視して、こうしますよというのは、止めたいですね。関係者やご家族とも話し合って、ご本人の意志を汲み取ったケアやサポートを提供していきたいと思っています。

 — 自分にとって訪問看護とは?

千枝さん:「自分の生きる糧」です。本当に訪問看護の利用者さんに逆に助けられてるなと思うので、自分の中の”支え”ですね。

早織さん:職員さんたちといろんな話をしていますと、利用者さんの話をしているときの表情が一番輝いているんですね。利用者さんと関わって、職員自身が得られるものはすごく大きいものなんだなって日々感じています。

今回お話を聞いた方について

株式会社はじめの一歩

取締役 岩本早織

2006年 保育士として約13年保育園勤務

2018年 はじめの一歩入社

2021年 取締役就任

2023年 訪問看護立ち上げ

「全従業員の幸せを実現し、利用者と地域に愛される会社を目指す」という理念のもと、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、デイサービス、訪問看護事業所を運営。

訪問看護ステーションゆいまーる

管理者 岩本千枝

1986年 准助産師として5年勤務

1991年 知的発達障害者施設で12年勤務

リハビリデイサービスやクリニック勤務経験後精神科認知症病棟にて8年勤務

訪問看護ステーション勤務

2023年 訪問看護ステーションゆいまーる入職

岩本早織さん、岩本千枝さんが働く事業所はこちら

事業所名訪問看護ステーションゆいまーる
サービス種別訪問看護
住所〒496-0031 津島市埋田町2-92 サンスポットK-10 N101
お問い合わせ0567-31-6915
ウェブサイトhttps://hazimeno-ippo.com/