在宅医療の現場で働くソーシャルワーカーが、心がけるべきこととは?|木の香往診クリニック 鈴木秀季

在宅医療介護の現場で働くひとたちの想いを伝えるインタビューメディア「メディケアワークス」。今回は、北区にある「木の香往診クリニック」鈴木秀季さんにインタビューしました。

医療ソーシャルワーカーとして働く前は、一般企業で会社員をしていた鈴木さん。医療業界に飛び込んだのは、身近な大切な人の手助けをしたいという想いからでした。そして、その想いは今でも鈴木さんの原動力になっています。
在宅医療におけるソーシャルワーカーがまだまだ一般的ではなかった時から、その存在価値を模索し続け、相談支援を続けてこれたのも、鈴木さんの相談援助業務に対する熱い想いがあったからだと感じました。

在宅医療ソーシャルワーカーの草分け的な存在である鈴木さんがどんなことを大切に日々の相談援助に取り組んでいるのか。ぜひご覧ください。

インタビューの様子は動画で公開中!ぜひご覧ください。

病院のソーシャルワーカーから、当時はまだ一般的ではなかった在宅医療のソーシャルワーカーに。

木の香往診クリニック・鈴木秀季さん

 ー自己紹介をお願いします。

鈴木秀季といいます。木の香往診クリニックという在宅療養支援診療所で、医療相談室の室長をしています。

 —クリニックの紹介をお願いします。

訪問診療を中心にやっている医療機関です。2010年に開院して、名古屋市北区に拠点を置いている本院と、中川区にある中川院の2か所で展開しています。

 —入職したきっかけを教えてください。

今年(2023年)、医療ソーシャルワーカーとして20年目を迎えたのですが、10年ほど病院で働いていた頃、病院のソーシャルワーカーという立場で、木の香往診クリニックの院長先生とかかわらせてもらいました。その際、「木の香往診クリニックにも医療相談員を入れたいので、だれかいい人がいたら紹介して」という話を聞いたので、「いい人がいる」とお伝えして、自分が履歴書を持って行きました(笑)

 —その当時、ソーシャルワーカーのいる在宅医療クリニックは少なかったのではないですか?

そうなんです。在宅医療機関で相談室という部署を持ったのは、他の医療機関と比べて、木の香往診クリニックは早かったなと思います。ですから魅力があった半面、在宅医療の相談員って何をするんだろうという疑問もありました。当時、相談室を設けている在宅医療機関は少なく、同じような在宅医療機関で働く相談員さんたちも、何をしたらいいのかということを、みんなよくわかっていなかったんです。そこで研究会を立ち上げ、情報を共有していました。

「情報は取りにいくもの」。病院から在宅へ移り、意識も大きく変化。

 病院とは環境が異なる在宅医療クリニックでソーシャルワーカーをやることに、不安はなかったですか?

不安はあまりありませんでした。ただ、実際に入職してみて、病院と在宅ってこんなに違うんだと感じることが多く、1年くらい苦労しましたね。

 具体的にどんな違いがありましたか?

病院のソーシャルワーカーをしていた頃は、情報を提供していく側という感覚がありました。地域の方々が自ら情報を取りに来てくれるわけですから、無意識に上からの目線になっていた気がします。一方、在宅では一転して情報を取りに行く側に変わったので、病院で上からやっているつもりはなかった自分にとっても、「このスタンスだと受け入れてもらえないな」と感じる場面が結構ありました。

もともと自分は、低姿勢な人間だと思っていました。ですが、在宅医療を始めて「病院で働いていた自分は、気付かぬうちに、だいぶ上から目線になっていたのかもしれない」と思わされたわけです。情報を取るために、自分の目線をちょっと修正する必要がありました。

 今までで一番印象に残っている利用者さんのことを教えてください。

80代の男性患者さんと、知的障がいを持っている娘さんの2人世帯のケースが印象に残っています。もともとはお母さんがキーパーソンとして機能していたんですが、その方が亡くなったことによって回らなくなり、問題が一気に出てきました。木の香往診クリニックとしては、患者さんであるお父さんに対してアプローチしていましたが、おのずと娘さんも支援していかねばならない形になったわけです。時間がかかるし、ケアマネジャーさんや訪問看護師さんだけでは対応できません。そこで地域包括支援センターや行政などすべてを巻き込んで、なんとか支援する体制を整えました。ただ、患者さんにはソーシャルワーカーとして自分がかかわっていましたが、娘さんには別の相談員がついているものですから、自身のポジショニングをこの支援に対してどう置くかというところに関しては、相当気を使ったケースでしたね。

ケアマネジャーとのスムーズな連携が不可欠。その時のチームに合わせて、自分のポジショニングを考える。

 在宅医療のソーシャルワーカーとして、気をつけていることは何ですか?

在宅医療の場合、患者さんを支援する専門職の方がたくさんいます。とくにケアマネジャーさんがついている場合、その方が在宅のことをしっかり把握してくださっています。そうしたケースでは、医療ソーシャルワーカーとしての自分が、どういう形でかかわれるのかということを、見極めなければなりません。ケアマネジャーさんがしっかり支援計画を持ってやっているところに、「そうじゃない、ああじゃない」と口を出す世界ではないと思うし、「じゃあ、かかわらなくてもいいや」という話でもまったくないものですから、そのケースケースで、どこに自分のポジションを取るかというところは、いつも気を使っています。

「医療ソーシャルワーカー」という職種には、「医療」という言葉が入っています。そうである以上、「医療」が壁になりがちな、福祉職からやっているケアマネさんに対しては、医療分野に自分のポジションを置いて、その部分との橋渡し的な役割を担うようにしています。一方、看護師さんがケアマネさんをやっているケースでは、制度の部分でのフォローを心がけるようにしています。その時のチームに合わせて、自分のポジションを考えていくことが、僕の中でポイントにしているところですかね。

 ケアマネジャーさんとのかかわりも、病院と在宅では大きく違いますか?

病院の話で言えば、入院中には先生、看護師さん、リハビリのスタッフさん、ヘルパーさんらがいますが、そこにケアマネさんの存在はまだなく、相談員がケアマネさんの役割を担っていくことになります。でも在宅では、ケアマネさんと相談員の間に、共存・補完し合う関係が生まれてきます。働いてみてわかった新発見でした。また、ケアマネジャーさんに対する見方も、病院にいる時と在宅にきてからでは、大きく変わりました。「こんなにすごいんだ」と思えたのは、在宅に来てからですね。もちろん、病院にいたときはすごく感じなかったという意味ではなく、かかわりがそれほどないので、わからなかったというところです。

 相談援助をするうえで大切にしていることは?

先ほど述べた「ポジショニング」もそうですが、もうひとつは「二面性」のある仕事と自覚し、そのバランスを取るということです。二面性とは、「相談援助をする専門職としての自分」と、「組織に所属する会社員としての自分」のことです。

この二面性を見たら、結構矛盾しているなといつも思います。本当は、専門職として時間をかけて患者さんに向き合いたいのに、固執しすぎると、会社に何らかの損が出てしまう…。一方、会社の方にフォーカスしてやっていくと、患者さんの支援が十分でなくなってしまう。ですから、このバランスをうまく取ることが、とても大事だと思います。それができないと、「自分がやりたいことをやらせてもらえない」と感じて、ストレスでつぶれちゃうと思うんですよ。二面性のある仕事だけど、これが普通なんだととらえられないと、長くは続けられないんだろうなと、最近よく思います。

 —お仕事をするうえで、ほかに心がけていることはありますか?

僕は、「敵を作らない」ってことを、すごく大事にしているんですよ。信頼を得るためにいろいろするのは難しいですが、敵を作るか作らないかは、自分の動き方次第ですからね。結局、敵を作らないと仕事がしやすくなりますし、仕事がしやすいということは、いい支援のチームができることにつながります。当然、患者さんの満足度も上がります。ですから、敵を作らない姿勢は、今の仕事をするうえで大事かなと思っています。

「自分の身近な人の手助けがしたい」。その小さな想いが今も昔も変わらぬ原動力。

 — 自分にとって仕事とは?

医療ソーシャルワーカーの自分というのは、「もう一人の自分」という風にとらえています。先ほどの話にも影響してきますが、プライベートを含めた会社の自分から、きちんと切り替えるためです。その「もう一人の自分」というキャラクターに、相談援助業務は合っているなと勝手に思っているので、「もう一人の自分」というふうに置いておいたほうが、死ぬまでソーシャルワーカーでいられる気がするんですよね。そういう気持ちも込めて、「もう一人の自分だな」といつも思って仕事をしています。

 — 医療ソーシャルワーカーになったきっかけを教えてください。

医療ソーシャルワーカーとして働く前は、一般企業で会社員をしていました。ただ、身近な人が病気やケガをした際、「がんばれ」しか言えず、何かやれることがないかと考えるようになりました。それがきっかけで相談員になったわけですから、動機は「社会貢献をしたい」とかではなく、本当に自分の身近な人の手助けができればいいというところから始まっている、ちっぽけなものだったんですね。だけれども、今、20年経って振り返ると、そのちっぽけなものが、一生消えない原動力になっているんですよね。それがある限り、今の仕事をずっとやっていきたいなと思っていますし、このちっぽけな動機が、自分にとってはのちのち大きかったなと思っています。

 — 一般企業で働いていた頃と比べて、何が大きく違いますか?

一般企業で営業をやっていた時は、毎月、棒グラフで売上が出るなど、良くも悪くも「今月は良かったんだ」「今月はダメだったんだ」っていうことがわかるような指標があったんです。でも、相談員の仕事にはそれがありません。客観的に見て、良かったのか悪かったのかをだれも教えてくれませんし、ひとりよがりで「よくやれた」と思うのも、ダメだと考えているものですから。

自分のやっていることの評価があまりないことに対し、おもしろみがないと思う方もいるかもしれません。ただ、とらえようによっては、苦しくならないとも言えます。先ほどの「二面性」の切り替えの話とも関連しますが、こうした考え方ができているので、自分はそこまでナーバスにならないで、今の仕事をできているのかなと思っています。

今回お話を聞いた方について

木の香往診クリニック

医療相談室 室長 鈴木秀季(愛知県在宅医療ソーシャルワーク研究会 代表)

一般企業で7年勤めた後、2003年社会福祉士を取得し、病院で医療ソーシャルワーカーとして10年勤務。
2014年木の香往診クリニックに入職し、在宅医療ソーシャルワーカーとしてスタート。
「自分の身近な大切な人のため」を原動力に医療ソーシャルワーカーとして奮闘中。

鈴木さんが働く事業所はこちら

事業所名木の香往診クリニック
サービス種別訪問診療
住所〒462-0059 愛知県名古屋市北区駒止町2-22
お問い合わせ052-908-8421
ウェブサイトhttps://www.konoka-clinic.com/