必要な人に必要なおせっかいを提供し、期待以上のサービスを届ける|訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川 伊藤留美

在宅医療介護の現場で働くひとたちの想いを伝えるインタビューメディア「メディケアワークス」。今回は、中川区にある「訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川」管理者の伊藤留美さんにインタビューしました。

インタビュー終了後、利用者さまのお孫さんから「私、看護師になりたい」という言葉をもらったんです!とおっしゃっていた伊藤さん。伊藤さんの支援が素晴らしかったからこそ、そのような言葉がお孫さんから出てきたのだと思います。訪問看護師は子どもたちの夢になる仕事なんだなぁと改めて感じました。

伊藤さんがどんな思いを持って日々の看護に取り組んでいるのか。ぜひその思いをご覧ください。

インタビューの様子は動画で公開中!ぜひご覧ください。

訪問枠は19時まで。急性期対応や終末期ケアなど、充実の体制で利用者さまやご家族のニーズに応える。

訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川 管理者・伊藤留美さん

 ー自己紹介をお願いします。

訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川の管理者 伊藤留美と申します。

 —事業所の紹介をお願いします。

事業所は2022年3月にオープンしました。三重県桑名市に本社があるのですが、当社の社長が名古屋出身ということで、名古屋市中川区に出すことになりました。

当事業所の強みは、19時まで訪問枠があることです。就寝前の入浴介助、夕方遅い時間の経管栄養対応、就寝前の準備支援など、19時まで訪問枠があることで、利用者さまやご家族のさまざまな要望にお応えできます。

また、私がもともと急性期病院の救命救急センターで働いておりました。なので、急性期の急変対応や、異常の早期発見など、お任せいただけたらと思っています。

さらに、終末期ケア専門士も持っていますので、終末期の方を多く看させていただいています。それも強みですね。

リハビリについても、脳卒中に特化した理学療法士や、認知症に特化した作業療法士も在籍しています。

エリアとしては、中川区、港区、中村区、南区がメインで、大治町、蟹江町、あま市、弥富市の一部にも訪問しています。

看護師が安心して働き続けられる環境を作りたい。

 — 事業所を立ち上げたきっかけを教えてください。

以前、私は訪問看護で働いていたのですが、家庭・子育ての事情でどうしても辞めざるを得なくて、病院に戻ったんです。訪問看護はやりがいのある仕事だったので、続けたかったのですが、家庭の事情で辞めざるを得なかった。つらい思いをしました。

「ステーションを立ち上げるから管理者になってくれないか」という話をいただいたときには、その時から2~3年経っていて、家庭や子育てが落ち着いていたんです。家庭環境が整った状況でお話をいただけたので、訪問看護に戻れるなと思いました。また、話を持ってきてくれた方が、すごく信頼できる方で。その方と一緒に働けるなら、ということで入職を決めました。

看護師が仕事をしていく中で、年齢や結婚や出産など、同じところで働きたくても、働き続けられないという状況になることもあると思います。そんなときに辞めるという選択をするしかないのがすごく嫌で。まわりが協力し合うことで、辞めなくてもいいような環境作りをしていきたい、という思いがありました。管理者としてステーションの立ち上げから関わることができれば、この思いを叶えられるのではないかと。これも入職のきっかけになりましたね。

 具体的にどのようなことを意識してステーション運営をしていますか?

訪問看護って、1人で回らないといけないので、不安を感じるスタッフもいます。自分1人で判断しないといけないから不安だと。でも、実際には1人で判断しなくてはならないわけではなくて。判断に迷ったりしたら、電話などでその場で相談してもらっていいんです。

また、病状等の利用者さま情報は事前に分かっているので、カンファレンスを通じて、予測されることを前もってみんなで学習・勉強しておくようにしています。訪問する前に土台を作っておくということですね。

訪問から帰ってきたあとにも、夕方にカンファレンスをして情報共有しています。相談、事前準備、情報共有。これらを通じてスタッフの不安を少しでも取り除くようにしていますね。

 ― 仕事と家庭の両立についてはどのようなサポートがありますか?

子どもを事業所に連れてきてもいいよ、ということにしています。事業所には事務員もいるので、子どもをみれる環境があります。ただ、現状は小さい子どもがいるスタッフがいないので、子どもを連れてくるスタッフはまだいないですね。

医療資源がない中で、ご本人の意向やおうちで暮らしたいという気持ちを支援できるのが訪問看護のやりがい。

 ― 訪問看護のやりがいを教えて下さい

病院では、治療を安全に受けていただくための看護をしていました。私がいたのは急性期の病院でしたが、退院して家に帰られたあとのことが分かっていなかったんです。一度退院しても、結局すぐにまた再入院してしまう方もいました。そのような方をみて、家でどのような生活をされていたのだろうか、と疑問に思っていたんです。

病院では看護師もたくさんいて手厚い医療が提供できます。一方で、在宅では介護する方が一人しかいなかったり、独居の方もいますよね。その方が体調を崩してしまったときに、病院に行かなきゃいけないのかどうかの判断もつかず、結局状態が悪くなってから病院を受診される方もよくいます。

このような在宅での状況の中で、看護師として入らせていただいて、少しでもご本人の意向やおうちで暮らしたいという気持ちを支援できるのが訪問看護です。看護師として、このような仕事ができるのは、すごくやりがいがあるなと感じますね。

介護力的に厳しいと思ったご自宅でのお看取り。家族みんなが利用者さまを支えるような環境が作れて、穏やかな最期を迎えることができた。

 今までで一番印象に残っている利用者さんのことを教えてください。

90歳代の女性で、ご自宅でお看取り希望ということで訪問させていただいた方が印象に残っています。そのご利用者様は、入院中にコロナに罹患され、食事がどんどんと摂れなくなってしまって、嚥下も厳しくなってしまいましたが、ご本人様の『おうちに帰りたい』という希望もあり、自宅に戻られてきました。

そこのおうちに住まれていたのは、ご高齢の方が2人いらっしゃる3世代家族です。介護は、お嫁様が中心となって介護されていました。日増しに負担が募り、精神的・体力的にも厳しくなり、夜間眠れなくなる日も多々ありまして・・・

お嫁様は、「こうやってあげたい」という気持ちが強くあるのに、体力的には難しい。そのギャップのせいで気持ちがついていかないところもあって。さらに、その中でお仕事もされていたので、大変だったと思います。

そのような状況下の中で、訪問させていただいて、まずはゆっくりお話を聴かせていただくことからはじめました。その中で、介護力的に厳しい中でも「やってあげたい」という気持ちの方が強かったんです。そこで看護師が訪問して全部やるのではなくて、一緒に考えてやっていくことにしました。例えば、嚥下の問題でなかなか飲み込みにくい場合にも、本人が飲める範囲で食べやすい方法などをお話しました。お嫁様は「食べさせてあげたい」という気持ちが強かったので、食べる楽しみが継続できるよう、お嫁様と一緒に考え、ケアを行うようにしたんです。

自然とお嫁様も「自分一人で全部やらなくてもいいんだ」っていう、整理もできて。次第に気持ちの負担が減ったようです。訪問当初、ご利用者様は夜間大きい声をあげたり不穏もあったのですが、まわりが落ち着くにつれて、ご利用者様自身も徐々に落ち着いていかれました。まわりの気持ちが安定していると、すごく伝わるのだなっていうのを感じましたね。そして、そのような姿を見ていたお孫さんたちも、自然と協力するようになり、よくご利用者様に話しかけていました。最終的には、家族みんなでご利用者様を支え、いつも笑顔がでてくるようになったんです。ご利用者様は、いい環境の中で、ご家族に囲まれてお看取りをすることができました。

「人を看る」とよく言いますが、それを肌で感じた経験になりました。私にとっても訪問看護師を続けていくうえで、非常に勉強をさせていただいたご利用者様です。

「どう生きたいのか」という思いを大切にしたい。

 — 看護を提供する上で大切にしていることはなんですか?

その方が今後どう生きたいか、どうしたいのか、どう思っているかというところを大切にしたくて。病院に行きたいと思う方、最期までおうちにいたいと思う方、ご家族に「ここまでは迷惑かけたくない」と思う方など、さまざまな思いを持った方がいます。

例えば、「バルーンは入れたくない、最後までトイレにいきたい」「足元の力がなくても最後まで自分でトイレにいきたい」という方も実際にいました。これが病院だと、無理だからバルーン入れましょうとか、ポータブル持ってきましょう、という話になってしまうと思うのです。

そうではなくて、本人の意向にそえるように、「どうしてそうしたいのか」ということを考えながら支援していきたいと思っています。

関係性が築けているからこそできる「必要なおせっかい」。利用者さまのパートナーとして生活を支える。 

 — 伊藤さんにとって訪問看護とは?

当社には「利用者さまが楽しく、楽に在宅生活ができるように『在宅生活にハートを届け、全ての人を笑顔に』する」という理念があります。在宅生活を送るためのパートナーとして利用者さまを支えていきたいです。

利用者さまより一歩先を歩いて行く手を示してあげて、時には一歩後ろから見守ってあげる。そんな存在でありたいなと思ってます。

おうちで暮らしたいという思いや、なにを大切にするか、というのはみなさん違います。今、ACPやリビングウィルをとらせていただいているのですが、人の気持ちは変わるもの。その都度、今のお気持ちを確認し、それをスタッフみんなで共有しながら訪問してます。

 — 理念の内容を詳しく教えて下さい

プラスアルファに気づいて行動する、いかに余計なことをするか、期待以上のサービスを提供する、楽しく楽に在宅生活を過ごすためのお手伝いをする、という内容がはぁちゃんの理念に込められています。

この中の「余計なことをする」というのは、ご本人やご家族から余計なことだと思われるところまで気づいて関わっていく、ということを意味しています。

また「必要な方におせっかいをしてきて」と話すことがあります。必要な方に対する必要なおせっかいは、すごく大事なことだと思うのです。「おせっかいをする」って聞こえは悪いのですが、人間関係が築けてないと、「必要なおせっかい」をしようとしても気付くことができないんです。そういうのも気付けるような関わりを持つように努めています。

はぁちゃんの理念も、自分が入職を決めた理由の一つなんです。この理念が自分には合っているなと思っています。

今回お話を聞いた方について

訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川

管理者 伊藤留美

中京病院の腎臓内科・泌尿器外科で7年、救急救命センターICU・救急外来・熱傷センターで10年勤務。
その他、特別養護老人ホーム・訪問看護・透析センターでの勤務経験あり。
今までの経験を生かし、「楽しく楽に在宅生活を送るためにハートをちゃんと届けます」という理念のもと、地域医療や在宅医療の専門職として貢献できるよう、日々奮闘しております。

伊藤さんが働く事業所はこちら

事業所名訪問看護リハビリステーションはぁちゃん中川
サービス種別訪問看護
住所名古屋市中川区伏屋三丁目1108番地 A号室
お問い合わせ052-301-3739
ウェブサイトhttps://haachan-kango.com/